神経ブロック療法って?
神経には運動神経、感覚神経、自律神経(交感神経、副交感神経)という種類があります。神経ブロックではこれら神経を遮断致します。神経ブロックの効果は1)痛みの悪循環を断ち切る 2)交感神経機能の遮断による鎮痛 3)脳に痛み情報が伝わらないようにする、もしくは痛みの原因となる刺激が伝わらないようにすることの三つに分けられます。
それでは、各効果について詳しく解説していきましょう。
1. 痛みの悪循環を断ち切る
痛みの刺激は末梢の感覚神経から脊髄を介して脳に伝えられて痛みとして感じられます(1)。一方脊髄に入った痛み刺激により脊髄の中で反射が起きて痛みのある場所に行く交感神経や運動神経が興奮します(2)。そうすると痛みがある場所の筋肉や血管の収縮が起こり血の巡りが悪くなり、酸素不足になります(3)。その結果その場所に痛み物質が出現してそれが局所に溜まり痛みがよけいにひどくなります(4)。痛みがひどくなるとこの脊髄の反射が強くなりさらに痛む状態となってどんどん痛みが増悪します。これを痛みの悪循環と申しますが、神経ブロックではこの反射経路のどこかを遮断してこの流れを断ち切ることにより痛みを治療致します(5)。一旦悪循環が断ち切られることにより局所の循環がよくなり障害部位の自然治癒が促進されることに加え痛み物質も洗い流されます。神経ブロックが局所麻酔薬の効果時間より長く効くのはこのためです。
2. 交感神経機能の遮断による鎮痛
交感神経が興奮すると血管が収縮して血流が悪くなります。血流が悪くなると前述しましたように痛みが増強します。また慢性の痛みには交感神経の興奮が関係しているものがあります。たとえば冷えると強くなり、暖めると弱くなる様な痛みはこの可能性があります。肝臓、膵臓を始めとした内臓の痛みは交感神経を通じて脊髄に伝えられます。このように痛みと交感神経とは関係が深いものです。神経ブロックの対象となる主な交感神経には星状神経節(顔、頚肩腕の血の巡りに関係します)、腹腔神経叢(上腹部の内蔵の痛みを伝える神経が集まるところです)、下腸間膜動脈神経叢(下腹部の内臓の痛みを伝える神経が集まります)、腰部交感神経節(脚、足の血の巡りに関係します)、上下腹神経叢(骨盤内の内臓の痛みを伝える神経が集まります)、不対神経節(肛門部や会陰部の痛みを伝える神経が集まります)があります。こうした神経を遮断することにより(5)局所の血の巡りをよくし痛み物資を洗い流すとともに障害からの回復を図ります。またこのブロックが血流障害や血流改善により改善する病気に対して有効なことは言うまでもありません。
3. 脳に痛み情報が伝わらないようにする、もしくは痛みの原因となる刺激が伝わらないようにする
癌などの痛みの原因となる所から出て来る感覚神経を脊髄に至るまでのどこかで遮断すれば痛みは脳には伝わりません(5)。これにより痛みを感じることが無くなります。主な神経ブロックの説明の項で述べますファセットサーモがこれに当たります。また皮膚などの体表面からの刺激により痛みが発生する場合、痛みの発生源となる刺激が伝わることを防止することにもなります。三叉神経痛に対する高周波熱凝固ブロックがこれに当たります。(高周波熱凝固療法によるファセットサーモや三叉神経ブロックは現在当院では行っておりません。)